シリーズ目次
その1 民間銀行の信用創造
その2 財政支出「が」貨幣を増やす
その3 貨幣の創造と破壊
その4 現金についてと、準備預金とその金利
その5 社会保障と国債、債券ディーラー、そして
「恐ろしいサメ」って? ←いまここです
「MMTレンズを通した金融のしくみ」、その5、いよいよ最終回です。
全体像の提示して、primerは終わります。
ちょっと壮大な話になりますが、今回の話についてこれれば、MMTが言っていることのかなりがわかるともいます。
そして、世界最大の財政赤字国ジャパンをMMTレンズで見たときに壮大な問題点がわかるようになる。。。ような気がします。
前回「その4」は、準備預金のところが少し難しかったと思います。
もし自信のない方は、そこをぜひ、しっかりと理解しておいてください。
なお、この準備預金について教科書的なもので日本語で読めるものとしては、以下をお勧めいたします。(というか、これしかないかも?)
ビル・ミッチェル「赤字財政支出 101」
Part 1、
Part 2、
Part 3
リッキー氏のブログ インターバンク市場の機能について
その1 その2
さて、準備預金や国債発行についていちおう理解していただいたとして。
ところがです。。。
日本の財務省が国債を発行するときって、
銀行が買うとは限らないですよね。だから、明らかにここまでの説明では足りない。「レイの入門
」でも足りないのですよ!
銀行以外に、証券会社もめっちゃ買うわけです。
ちょっと一句できました。
国債は 証券会社が めっちゃ買う
とくに、小泉政権下の2004年10月に創設された「国債市場特別参加者制度
」というものによって、「国債の安定的消化の確保」を目的に、なんか20数社が選定されているらしいですね。
これらの会社は、新規国債を優先的に割り当てられます。
このとき金利がどうやって決まっているかは、たいへん興味深いのですが、謎です。
(ちょっとぐぐったので本エントリの最後に参考リンク)。
ということで、今回は「ディーラーたち」という名前で図に入れてみました。
それと、年金と保険を入れました。これも重要です。今の国債の保有者を調べてみると、どうなっているかすぐにわかります(そのへんは、入門を超えるので、またいつか)。
要するに国債は、基本的に銀行内部と年金保険、そしてディーラーたちが持つことになります。
それを追いかけてみましょう。
どうか最後までついてきてください。
今回の基本図。
ちょっとうれしくない話から始めましょう。
図5-1 庶民が年金・保険料を徴収される
この流れそのものは、いいですね?
年金とか保険とか、庶民にゅんとして、毎月苦々しくおもっている処理。
図の年金保険は、必ずしも公共の年金保険だけでなく、個人で加入する民間保険もここに入れて考えていいです。
では行きましょう、
そうしたら次に、ここに赤字財政支出が入ります。
庶民のために財政打てや!\(^o^)/
「その2
」で見たように、財政支出とは結局のところ貨幣の創造ではありますが、今回はMMTレンズを外さずに、政府が新規国債を発行する様子からじっくり追いかけましょう!
新規国債は、銀行以外に証券会社(債権ディーラー)がたくさん買っています。
次の例では財務省は「3
」の新規国債を発行します。
うち「1」をZ銀行が、残りの「2」は債券ディーラーが購入するとします。
後者は、銀行が買うよりも、ちょっとトリッキーですが、ここまでを理解していれば、がんばればきっとわかるはずです!
いきますよ!
図5-2 赤字財政支出のための国債発行
ここで、銀行の国債購入はオレンジのところですが、「その2
」でやったのと同じです。
債券ディーラーの国債購入の関わる動きは黄色です。預金通貨と国債の交換となっています。
その間で、ディーラーの預金(と銀行の債務である預金)が消滅している。
まあ、細かいことはいいですよ。
要は、ディーラーは国債を入手しました。
次は、もうおなじみですね。
Y銀行とZ銀行は準備預金が不足するので、中央銀行が調節します。
図5-3 新規国債発行後の、中央銀行の金融調節
以上で、政府は「3」の政府預金を得ました。
これを、予算に従って財政支出するわけです。
財政支出は、企業に振り込まれることもあれば、公務員に振り込まれることも普通にありますよ。そうでないと公務員が生きていきません。
で、こうしてみました。
図5-4 政府が財政支出を実行!!!
おわかりですね!
「その2
」でやった、財政支出が民間に貨幣を誕生させる瞬間!
さらに三倍!
右下の人が公務員のあなた!\(^o^)/
ここの動きはわかっていただいたとして。
そのうえでNOC(にゅんオカシオコルテス)が全国民に考えてほしいと願うのはこのことです。
財政支出ってなんだろう?
これは景気対策なんだろうか?
これはデフレ対策なんだろうか?
好きなところに「貨幣を創造」させているんじゃね?
徴税も同じことなんじゃないの?
(どうもこの話は熱がはいってしまうようです。。。)
さて、次もおなじみ、銀行の準備預金が過剰になったので「金融調節」が入ります。
図5-5 中央銀行の金融調節
これ、ここまでの読者さんはぜったいわかっていなければだめですよ!!
では次に、公共事業を受注した会社が従業員に給与を支払うところ。
図の下の左のお前ら、待たせたな!
図5-6 企業が従業員に給与を振り込む
さて、ここで終わり。。。というわけには実はいかない。
庶民は社会保険料を源泉徴収されていたりする。
もちろん全額ではないけれど、死なない程度にこの動き。
最初の図5-1が再現されるわけですよ。
図5-7 庶民はまたしても年金・保険料を徴収される
ねえ。。。
そして、年金とか保険って、だいたい国債で運用されているらしい。
図5-8 年金・保険は安全資産の国債で運用を始める
さ、どうよ?
この赤字財政支出、「景気対策
」として行われたかもしれない。
この支出を「バラマキだ」と批判するひともいるよねえ。。。
公も民も、あんまり幸せになってない。
かといって会社もほかにいい支出先がないんだな。とくに、モノづくり系なんて!
でもまあ、「MMTレンズ」による預金通貨と国債と現金の動き方についての基本的な説明を終わります。
そうしたら、次はどうか
モズラーの七つの嘘の、六番目をぜひ読み返してみてください。
そして次のことをあわせて考えてみてください。
「赤字財政支出に国債発行する必要は、そもそもなく、別の方法はある」
「国の債務の問題は、将来世代の問題ではない。分配の問題に帰結する。」
ここまでは、本家MMTerが何度も何度も言ってますよ。
モズラーの言う「サメ
」ってなんだろう、上の図のどこかに現れているかしら。
「肥大化したクジラ」を飼っていれば、必ずサメが現れる
Primerシリーズはこれでおしまい。
これについて自分の見立てとか、どのように中産階級が消えるのかとか、格差がどうやって生まれたかとか、それを正当化する学問があるんじゃないかとか、まあ思うところはいろいろありますが、このエントリに書くことではないですね。別の機会にやりましょう。
【参考資料
】
今の国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)がいったいどこなのか、ちょっとググったのですがよくわかりませんでした。。。
でも、去年に
表にまとめてくださった方がいらっしゃいましたよ。
「ほとんど変わらない
」って書いてありますけど、変わってないでしょうええ。
なお、この方の見解には必ずしも全面的に賛成では、ないです。
新規国債の金利は談合で決まっている可能性は高い、というか、この人の書かれる通り不自然すぎる動きをしている。得をしている人は、財務省でなく、買い手だ。(おっと誰かきたようだ)
1. 質問
1. 基本図の時点で各銀行の預金4に対して準備が2になっていますので準備率50%ですが、それ以降の図はそうなっていないように見えます。これは問題ないんでしょうか?
2. プライマリー・ディーラーってのは「新規国債を優先的に割り当てられます」というよりは逆に「新規国債を買わなきゃいけないけれどいくつか特典がある」ような機関なのでは?まぁ、上記の議論には影響はないですけれども。
3. 「公も民も、あんまり幸せになってない」というのはまだ良くわからなくて、その後の金利の動きも「幸せ」にとって重要なのではないでしょうか。
4. 庶民は保険・年金に預金を取られていますが、同時に保険・年金を資産として持つのでは?それは影響ありませんか?ありますよね?
図にしてしまったせいで、どうもストック・フロー・コンシステントでなくなっているように見えます。