MMTレンズ シリーズ!
その0:エレファント・イン・ザ・ルーム その1:象がいない「主流」ビュー その2:MMTビュー簡略版(とデフレ経済) その3:「財政に従属する金融政策」とは その4:おぼえよう!財政スペース ← 今回はここです! その5:財政スペース② 遊休資源と「より良い社会」の話
さてさて。
前回の予告と違ってしまいますが、思うところあって「財政スペース」の話をば。
何しろこの「財政スペース」の考え方、MMTがマクロ政策を語るときのいちばん基本的な言葉なので、今後のためにもわかってもらわないと困るのです!
あと、これがわかるとほとんど人はこれまでの財政政策観がかなり変わると思います。
自分はひっくり返ったんですよ、これで。
中央銀行じゃないじゃん、政府じゃん、って
この言葉、MMTの日本語文献ではあんまり見たことない、ですかね?
そこでたとえば、ケルトンが初めて日本のマスコミのインタビューを受け始めた頃の朝日新聞のインタビュー。
これ、日本語版の翻訳がアレだったのでここでこっそり自己流翻訳したのですが、ちょっと引用しますね。
Q:トランプ政権の大型減税に賛成しましたか?
反対でしたよ。ただ、減税それ自体に反対ということではありません。政府がやったのは恩恵が富裕層に集中する減税だったのですが、ならばその分をインフラや教育、研究開発などの投資に使うべきでした。財政スペースを減税よりももっと上手に利用する方法がありました。そもそも減税は間接的な刺激にしかなりません。4%成長は簡単に達成できていたのです。
実はこの財政スペースは「その2」でお見せした図のこれです。
図4-1 「財政スペース」ってここです!
財政支出についてよくMMTerはこんな風に言います。
「もしインフレが人々の許容するレベルを超えるようなら財政支出を減らしたり税を増やして対応することができます」
これって財政スペースをどう使うかって話なんです。
主流ビューに侵された人は、こう感じてしまうんですよね。
「許容するレベルっていくつだよ!」
「そんな曖昧じゃ困るよ」
「世界標準のインフレ目標値で2%だろ?」
違うんです。
まず、経済学を忘れてください。
今後ゆっくりその辺をお話していきたいわけですが、今回は一番の基本だけにいたしましょう。
G-T≡ΔB+ΔM
っていう恒等式の話。
図の右側の政府信用マネー、つまりB(国債)+M(ベースマネー)。
これは G(政府支出)からT(徴税額)を引いたもの、つまり、「財政支出で誕生し、まだ徴税されていない分」でしたよね。
そうすると政府はこの総量を変えていますよね。
別にMMTだから、ではなく、レンズで見たらこれ絶対真理でした。
増やす方法は二つだけ。
方法1 財政支出を増やす
方法2 減税する
政府が財政スペースを埋めようと思ったら、これ以外ないです。
その様子を図にしておきます。
図4-2 政府が財政スペースを埋めるだった二つの方法
ということで、恒等式(G-T≡ΔB+ΔM)と財政スペースの話でした。
(そういえば経済学者の野口旭の長い妙なMMT批判、その第一回でこの式(ちょっとだけ違うのですが)を出していたんですよね、だから一回目はけっこう期待したものです。まさかそのあと全然触れないなんて!)
さて。
スペースを埋めるだけなら減税でも財政支出でも同じです。
上のケルトンインタビューでもその辺触れているのですが、違いのポイントは実物資源を動かすことになっているかどうか。
いろいろある減税の中でも、どうせお金を使わない富裕層の減税をやっても、使われる実物資産は変わらない。総産出は変わらない。
でも、インフラを整備する財政支出だったら??
次回に続きます\(^o^)/
ぜひ、考えてみてください。